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「鹿の王」を読む

大晦日にしては合わない話であるが、本を読んでいるので感想を少し書く。題名は「鹿の王」、作者は上橋菜穂子氏である。ファンタジー作品なのではあるが、妙にリアリティーのある世界観でファンタジーを借りた現実世界のパロディーだと自分的には考えている。かつてはSFが社会の批判的な話を沢山作った。最近はSFも下火になってしまったが、変わりにファンタジーがそれをしているのだろうか?上橋氏の作品は深みのある世界観でファンの層が広く深いのが特徴である。自分的には好きな作家である。

鹿の王の推薦文を沢山の文化人たちが書いている。特に注目するのは医者である養老孟司氏のソレである。一冊で3度も楽しめると養老氏は書いている。「冒険小説と読むうちに医学を知り、社会を知る。一冊で3冊の楽しさ」、このようなことを書いていた。作者の上橋氏の教養というか間口の広さというか、展開する物語の奥行きには脱帽である。作家としては決して多作ではないが、その分圧倒的な世界観の作品で充分に楽しませてくれるのである。いい仕事をしている作家でしょう。鹿の王から、その次をせっかちにも期待するのは惨いこと。しばらくゆっくり休んで、また我々を驚かす話を書いてください。で、感想を書いていなかった。物語はロシアや中国のような大国に支配されるシベリアの小国を連想する架空の世界である。大国に抵抗する少数民族、支配に躍起となる大国の支配者たち。そこに謎の伝染病が広まり、ソレを防ごうと全力を尽くす若き医師。様々な人間の思惑や駆け引きの渦巻く中、病気に感染しながら生き延びた一人の男と幼子、男は血のつながらないその子どもを我が子として育てることに。物語は簡単に書けるほど生易しくは無いのである。作者の執念に就いてゆく体力が必要なのである。本はヒトを選ぶのである。040.gif040.gif040.gif
by sakulasou567 | 2016-12-31 21:22 | | Comments(0)